こんにちは、調味料販売をしながら料理の勉強をしているカセです。
最近、テレビで魚醤が取り上げられる機会が増えてきましたね。ラーメン専門店さんがスープ作りに使用することが多いようです。「使ったことはないけど試してみたい!」という方も少なくないのではないでしょうか。しかし、ひと口に魚醤と言っても沢山の種類があります。「どれを使えば良いのかわからない…」と悩んでしまいますよね。
そこで今回は、国内外の有名な魚醤6種類とその特徴についてご紹介します。
魚醤とは
魚醤とは魚を塩漬けにして発酵させた調味料のことを指します。醤油は大豆を塩漬けにして発酵させますが、魚醤は大豆の代わりに魚介類を使っているとイメージしてもらえればわかりやすいかと思います。
普通の醤油と比べて塩分濃度が高く、一般的な醤油が塩分濃度13%~16%程なのに対し、魚醤は20%~25%程になっています。醤油よりもさらに塩辛いため、入れすぎないように注意しましょう。
醤油に使用されている大豆は植物性たんぱく質由来のためさっぱりした味に仕上がりますが、魚醤は動物性たんぱく質由来のため、独特の甘みと魚介ダシのような濃厚な味に仕上がるのが大きな違いです。旨味成分が多く含まれている魚醤ですが、魚介類を発酵させているため独特の生臭さがあります。醤油よりもクセが強い調味料と言えるでしょう。
日本国内の魚醤の種類
魚醤は日本でも昔から製造されてきた伝統ある調味料なのですが、醤油製造技術の発達とともに数を減らしてしまいました。それでも、有名な漁場がある地域では今でも魚醤が作られています。その中でも特に有名な「日本三大魚醤」と呼ばれる名産品についてご紹介します。
秋田県のしょっつる
日本でも特に有名なのが秋田県のしょっつるでしょう。しょっつるは塩魚汁とも書きます。秋田県では毎年冬になるとハタハタが豊富に獲れるため、そのハタハタを利用して昔から魚醤が作られてきました。(ハタハタは秋田県の県魚にもなっています。)
しょっつるの大きな特徴は、何といってもクセが無く生臭さが目立たない点にあるでしょう。魚醤は製造の際に使用する原料(魚の種類)により風味が大きく変わるため、ハタハタを使用しているしょっつるはクセが無く食べやすい味に仕上がっています。
秋田県ではしょっつる汁やしょっつる鍋などの郷土料理に欠かせない調味料として昔から愛されています。
石川県のいしり、いしる
次にご紹介するのが石川県のいしり、いしるです。能登半島で獲れた魚介類を使用し、この地域でしか作れない味に仕上がっています。「いしり」と「いしる」は訛りの違いのように聞こえますが、実は全く別の物を指しているのです。
「いしり」は富山湾側で獲れる真イカの内臓を塩漬けにして作られた魚醤を指します。富山湾側では真イカが豊富に獲れるため、イカ魚醤作りが盛んになりました。
「いしる」は日本海側で獲れるイワシやサバを塩で漬け込んだものになります。
「いしり」は真イカを使用しているため味が濃厚でクセが強く、「いしる」はイワシやサバを使用しているためさっぱりとして食べやすいのが大きな特徴です。
香川県のいかなごしょうゆ
日本三大魚醤の最後は、香川県のいかなごしょうゆです。「いかなご」という名前の魚が原料になっています。他の魚醤と比べて非常に淡い色をしており、見た目にはスッキリとしていますが、塩分濃度は28%~29%と非常に高く(一般的な魚醤が20%~25%)とにかく塩辛いのが大きな特徴です。
しょっつるやいしり・いしると比べて生産量が少なく、目玉となるような郷土料理が無かったため、一時期生産者がいなくなってしまったという歴史がありますが、今は名産品の一つとして製造が再開されています。
海外の魚醤の種類
日本ではあまり目立たない魚醤ですが、海外では非常にメジャーな調味料となっています。海外では醤油に代わるような塩辛い調味料が少ないため、自然と魚醤が使用されるようになったのです。その中でも特に有名な3種を紹介します。
タイのナンプラー
世界一有名な魚醤と言えるのがこのナンプラーです。「食べたことは無くても名前ぐらいは聞いたことがある!」という方も多いのではないでしょうか。タイでは非常にメジャーな調味料になっており、日本における醤油のような感覚で広まっています。一般家庭から高級料理店まで、大衆向けナンプラーから高級ナンプラーまで幅広いラインナップで製造されています。
ナンプラーの主原料はカタクチイワシになります。なんといってもその最大の特徴は匂いでしょう。日本の魚醤よりもさらに生臭さがキツいため、かなり人を選ぶ調味料と言えます。
ただし、この生臭さは火を通すと飛んでしまうため、煮物料理や炒め物などに使用されるケースが多いようです。
ベトナムのニョクマム
ベトナムで有名なのがコチラのニョクマム。コチラもカタクチイワシを主原料とした魚醤になります。
実はタイのナンプラーとベトナムのニョクマムにはほとんど違いがありません。使用している原料(魚の種類)も、製法もほぼ同じためです。ニョクマムの方が若干発酵期間が短く、生臭さがキツいという特徴があるらしいのですが、現地の人でもその違いはほとんどわからないそうです。
イタリアのコラトゥーラ
南イタリアでも特に有名なアマルフィの名産品、それがコラトゥーラです。コチラもナンプラーやニョクマム同様、カタクチイワシを使用して製造されています。
ただし、原料は一緒でも使用方法が全く違うのが面白いポイント。イタリアではコラトゥーラはパスターソース用の調味料として使用されています。通常、パスタは塩で味付けをしますが、コラトゥーラは非常に塩分が強いため、塩の代わりとして使用されています。日本でいうところのパスタを醤油で味付けするような感覚ですね。パスタを塩で味付けするよりも、魚介ダシの旨味が広がって美味しくなるのが大きな特徴です。
一般的にはナンプラーよりも塩分濃度が若干低いとされています。
まとめ
いかがでしたか。今回は国内外の魚醤6種類の特徴と、味の違いについてご紹介しました。
国内では日本三大魚醤と呼ばれる「秋田県のしょっつる」「香川県のいしり、いしる」「香川県のいかなごしょうゆ」が特に有名です。海外では「タイのナンプラー」「ベトナムのニョクマム」「イタリアのコラトゥーラ」などが有名です。
日本の魚醤はイワシ、サバ、ハタハタ、タラ、イカ、エビ、いかなごなど色々な魚介類を使用していますが(日本各地で主原料が異なる)、海外ではカタクチイワシをメインに使用しているようです。