日本で古くから作られている魚醤。大豆を発酵させて作るのが醤油なのに対し、魚を発酵させて作るのが魚醤です。秋田の「しょっつる」や富山の「いしり」、香川県の「いかなごしょうゆ」といえば一度は聞いたことがあるんじゃないでしょうか?醤油と比べて魚独特の匂いとうま味成分の強い魚醤ですが、その味や調理方法は意外と馴染みがありません。そこで今回は魚醤の特徴、料理への活用法、魚醤の名産地についてご紹介します。
魚醤とは?
魚醤とは魚介類を発酵させて作る鎌倉時代から伝わる、歴史ある液体調味料の一つです。字の表す通り、魚で作る醤油のことを指します。古くから伝わる魚醤ですが、室町時代頃に大豆の醤油が普及し始めると製造量が激減し、一部の名産地を残して姿を消してしまいました。
海外でも魚醤造りは発達しており、日本よりもメジャーな調味料と言えるほどです。有名なのはタイのナンプラーや、ベトナムのヌクマム(ニョクマム)、欧米のアンチョビなどが挙げられます。特に、塩辛い調味料の種類が少ない東南アジアでは魚醤は料理に欠かせない調味料となっています。
魚醤はどんな味?
魚醤の最大の特徴は塩辛さとうま味成分、そして独特の匂いにあります。ひと口舐めたことがある方なら想像できると思いますが、醤油よりもさらに塩辛く、数滴でしょっぱさを感じる味となっています。そのため、醤油と同じ感覚で料理に使用すると凄く塩辛い味になってしまうため注意が必要です(逆に言うと少量で味が調えられます)。また、魚を原料としているためうま味成分がたっぷりと溶けだしており、醤油よりもだしのような風味を感じられるのが特徴です。その反面、魚独特の香りが強く、苦手な人には苦手な匂いとなっています。ただし、近年は香りの少ない魚醤も多く、熱に弱いという特徴も持っているため加熱調理で匂いを飛ばすレシピも数多く提案されています。
魚醤の種類
ひと口に「魚を使った醤油」と言ってもその種類は多く、アジ・イワシ・ハタハタ・鱈・イカ・エビ・牡蠣・鮎など色々な魚介類を使った魚醤が存在しております。魚の特徴によって香りの強さや甘み、苦みなどが微妙に違ってくるのが面白いところです。今回は日本三大魚醤と呼ばれる、三つの地域の魚醤をご紹介します。
日本三大魚醤:秋田のしょっつる
秋田県の県魚であるハタハタとイワシをメインに使った魚醤です。しょっつるは「塩魚汁」とも書きます。この魚醤を使って作られる「しょっつる鍋」は秋田県の郷土料理として全国的にも有名です。
日本三大魚醤:能登半島のいしる(いしり)
能登半島でとれたイワシやサバを魚醤にしたものを「いしる」、イカの内臓を塩漬けしたものを「いしり」と言います。香りは個性的ですが、他の魚醤と比べて使いやすいとされています。
日本三大魚醤:香川県のいかなごしょうゆ
瀬戸内でとられるいかなご(スズキ科の小魚)と呼ばれる魚から作られるのがこの「いかなごしょうゆ」です。他の魚醤と比べて色が淡く、芯のあるすっきりした味わいが特徴です。他の魚醤と比べて名物となる郷土料理が少なく、一時期生産者が減り消滅してしまいましたが、近年は名産品として製造が再開されました。
魚醤を使ったオススメ料理
独特の風味と濃厚なうま味が特徴の魚醤ですが、意外とその利用法を知られていません。加熱することで独特の風味は飛ぶため、炒め物、焼き物、煮物などに多く使用されています。ただし、気を付けたいのが醤油よりも塩分濃度が高いため、使う分量に注意しなければいけないということです。できれば味を見ながら少量ずつ足して調節しましょう。隠し味として少量だけ入れる、という使い方が多いようです。
【魚醤を使ったオススメ料理】