こんにちは、調味料販売をしながら料理の研究をしているカセです。
最近、調理番組でラーメンの隠し味に魚醤が使用されて話題になりましたね。「魚醤って聞きなれない調味料だけど、どんな味なんだろう?」と不思議に思っている方も少なくないと思います。魚醤と醤油は塩分濃度も香りも全く違うため、同じようには使用できません。
そこで今回は魚醤と醤油の違いについてご紹介します。
魚醤と醤油の違い
魚醤と醤油の違いについて、「原料」、「味」、「香り」の三点から解説していきます。
原料の違い
名前の通り、魚醤と醤油は原料が大きく異なります。魚醤は魚介類(イカ、エビ、イワシ、アジ、ハタハタ、アユなど)を塩漬けにして発酵させたものを指しますが、醤油は大豆を塩漬けにして発酵させたものを指します。魚醤は魚を使用しているため「動物性たんぱく質」が主体になっていますが、醤油は大豆を使用しているため「植物性たんぱく質」が主体になっているのが大きな違いです。
味の違い
魚醤と醤油は見た目は非常によく似ていますが味は全然違います。どちらも塩漬けの発酵調味料のため非常にしょっぱいのですが、魚醤の方が塩分濃度が高く塩辛いのが特徴です。一般的な醤油が塩分濃度13~16%程なのに対し、魚醤は20%~25%ほどあります。魚醤に慣れていないうちは、料理に入れすぎないように十分に注意しましょう。
原料の項目でも書きましたが、醤油は植物性たんぱく質のためクセの無いスッキリした味わいになります。それに対し、魚醤は動物性たんぱく質のため、コクと甘みのある濃厚な味わいになるのが特徴です。そのため、醤油は鰹節と、魚醤は昆布と合わせると足りない部分を補い合って美味しく仕上がります。
香りの違い
魚醤と醤油の大きな違いの一つに、「香り」があります。醤油は大豆由来のためサッパリとした香りになっていますが、魚醤は魚介類を使用しているため独特の生臭さがあります。タイのナンプラー(イワシを使った魚醤)のように魚独特の臭みがあるのを想像してもらえればわかりやすいでしょう(実際には日本産の魚醤はナンプラーほど匂いが強烈ではありませんのでご安心ください)。
魚醤の香りを好きという方もいますが、万人向けとは言いづらい匂いなのは間違いないでしょう。ただし、煮物料理や炒め物のように熱を通すと臭みが飛ぶため加熱調理と相性が良いと言われています。
日本の魚醤
魚醤は日本でも歴史の古い調味料ですが、醤油の発達とともに生産量が減ってしまいました。日本人が採食中心だったことに加え、醤油の方が保存性が高かったため、魚醤よりも発展したと考えられます。
ですが、日本の有名な漁場では、現在も魚醤が伝統的に製造されています。有名な物では、秋田県のハタハタを使った魚醤「しょっつる」、石川県のイカ魚醤「いしり」・イワシ魚醤の「いしる」、香川県のいかなご魚醤「いかなごしょうゆ」などがあります。石川県のいしり・いしるを一つにまとめて日本三大魚醤と呼ばれています。
「しょっつる汁」や「いしり漬け」など、その産地の郷土料理に欠かせない調味料となっています。
海外の魚醤
日本だけでなく、海外でも魚醤は発展しています。どちらかというと海外の方がメジャーと言えるぐらいです。有名な物ではタイのナンプラーや、ベトナムのヌクマム(ニョクマム)、イタリアのコラトゥーラ、欧米のアンチョビなどが挙げられます。
日本では醤油があるため魚醤はあまり発展しませんでしたが、反対に醤油の無い海外では魚醤が広く普及しています。タイのナンプラーなどは世界的にも非常に有名で良い例でしょう。
日本産の物と比べて、海外の魚醤は臭いが非常に強いのが特徴です。「日本の魚醤は食べられるけど、ナンプラーのような海外の物は生臭くて食べられない」という人も多くいます。
魚醤の美味しい食べ方
先ほど書いた通り魚醤は独特の生臭さがありますが、火に通すと臭いが飛んで旨味成分だけが残ります。そのため、煮物料理や炒め物などに最適です。これはナンプラーにも共通した食べ方です。
【魚醤のオススメの食べ方】
まとめ
いかがでしたか。今回は魚醤と醤油の違いについて解説しました。魚醤と醤油の大きな違いは「原料」「味」「香り」の三つです。魚醤は魚介類を塩漬け発酵したもので、醤油は大豆を塩漬け発酵したもになります。
醤油は植物由来のため、サッパリとしていて食べやすいのですが、魚醤は魚を使用しているため濃厚なコクがある分クセが強いのが特徴です。また、魚醤の方が塩分濃度が高く塩辛いため、慣れていなうちは入れすぎないように注意しましょう。
また、魚醤はその名通り魚介類を発酵させているため、独特の生臭さがあります。醤油と比べて人を選ぶ調味料なのは間違いないでしょう。ただし、加熱調理すれば臭いをある程度飛ばすことができます。