こんにちは、食品調味料販売を行っておりますカセです。今日は秋田県の名物調味料しょっつるについて聞かれることが多かったので解説いたします。そもそもしょっつるって何?原料は?どうやって使うの?という疑問にお答えします。さらに私カセが実際に作って味を確認したしょっつるレシピもご紹介いたします。
しょっつるとは?
しょっつるとは秋田県にて江戸時代初期から製造されている伝統的な調味料です。ハタハタなどの魚介類をベースに、塩で漬け込み長期間発酵させ旨味成分を凝縮させた醤油に似た調味料のことを指します。しょっつるは「塩魚汁」とも書きます。
魚介類を塩で漬け込んで発酵させることは決して珍しくなく、日本のみならず世界中で同様の調味料が多数存在しています。有名な物ではタイのナンプラー、ベトナムのヌクマム(ニョクマム)、イタリアのコラトゥーラ、古代ローマのガルムなどが挙げられます。日本では魚醤の名で親しまれておりますが、醤油の普及とともに姿を消していきました。しかし、その中でも根強い人気を誇り生産され続けているのが秋田県のしょっつるです。石川県のいしり、香川県のいかなごしょうゆと並んで日本三大魚醤とも呼ばれ全国的に非常に有名な魚醤なのです。
しょっつるの原料ハタハタ
しょっつるの主な原料は秋田県県魚のハタハタです。日本海沿岸に冬の訪れとともに大量に現れ、貴重な保存食として利用されてきました。大量に獲れるハタハタを保存のために塩に漬けこんで発酵させるのは自然な流れだったのかもしれませんね。魚醤に使われる一般的な魚介類と違い、ハタハタは臭みが少ないことが大きな特徴であり、しょっつるにもその特徴が引き継がれています。
絶滅の危機に瀕したハタハタの歴史
昭和中期まではハタハタが大量に獲れたため、非常な安値で取引されていました。どんぶり勘定で売買され、ハタハタを入れる容器(箱)よりも中身が安かったとまで言われております。そのため、しょっつるに使われる魚介類もほとんどがこの安価なハタハタでした。
しかし昭和の末期になると乱獲の影響で漁獲量が激減し、最盛期の一割未満まで落ち込んでしまいます。昭和の終わりから平成初期までハタハタは全面禁漁となってしまいました。この時期のしょっつるにはハタハタではなく、アジやイワシなどの他の魚介類が使われていたそうです。
2000年代に入るとハタハタの数は回復し、漁が再開され漁獲量が徐々に高まっているそうです。全面禁漁、ハタハタの生態系研究、保全活動を通して絶滅の危機を脱したということですね。現在のしょっつるにはハタハタと他の魚介類が混合で使用されているそうです。ただし、メーカーによってはハタハタのみ所もあるとのこと。
しょっつるの製法
ハタハタの頭、内臓、尾を取り除き、30~40%の塩に漬け込みます。製造所(メーカー)によってはハタハタだけでなくアジやイワシなどの他の魚介類を混ぜたり、内臓を取り除かずにそのまま入れる場合もあるそうです。発酵環境や温度管理が必要な場合もありますが、基本的には常温で1~2年発酵させます。ただし、塩分濃度により発酵のムラができるため、定期的に混ぜる必要があります。長い時間をかけてタンパク質が旨味成分の素となるアミノ酸に分解され、身が溶けて液体状に変化します。ドロドロの液体をろ過して骨などの固形物を取り除き、加熱処理することで晴れて「しょっつる」となります。繰り返しろ過したものや、繰り返し浮いた油脂分を取り除いた清澄なしょっつるが商品価値が高いとされています。
しょっつるの利用方法
しょっつるをはじめとした魚醤は、元々醤油の代わりに調味料として使用されていたので煮物、汁物、炒め物に使用できます。醤油との最大の違いは、魚の旨味成分がたっぷりと凝縮されているため少量で味に深みとコクが生まれる点です。ただし、魚介独特の匂いがあるため、そのまま食べるのではなく一度火を通す調理方法がオススメです。近年ではパスタやチャーハン、ラーメンといった幅広い分野で活躍しています。本場秋田県ではしょっつる汁やしょっつる鍋などの郷土料理に欠かせない存在となっています。ただし、醤油よりも塩分濃度が高いため(一般的な醤油が塩分濃度16%前後なのに対し、魚醤は20%~25%ほど)、醤油感覚で入れずに少量ずつ使用して味を整えると良いでしょう。
しょっつるを使用したレシピ
しょっつる汁
秋田県の郷土料理の一つ、ハタハタのしょっつる汁。醤油や味噌を一切使わず、しょっつる、お酒、だしのみで味付けするのがポイントです。ハタハタの脂が溶けだして絶品!
魚醤を使った浅漬け
石川県のいしり漬けにヒントを得た、魚醤で漬け込んだ野菜の浅漬けです。魚醤に加えて酢、レモン汁、砂糖を加えることであっさり美味しく仕上がり、魚介の嫌な臭いもほとんど消えてしまいます。とにかく簡単に作れるためオススメです!
魚醤を使った焼きおにぎり
魚醤の風味をシンプルに味わいたい、そんな方には魚醤の焼きおにぎりがオススメです。焼いたおにぎりの表面に刷毛で魚醤を塗ることで美味しい一品に早変わりします。
ペペロンチーノ
にんにくとオリーブオイルに、魚醤の風味が絶妙にマッチします。和風パスタのような醤油ベースの味わい深い一品。
トマトソースパスタ
トマトソースに魚醤で味付けをした一品。通常は塩で味付けをしますが、魚醤を使用することで味に深みがでます。
パスタ・ブォーロ
パスタとバター、粉チーズ、黒こしょうを混ぜるだけの元祖時短レシピを魚醤を使ってアレンジ!醤油バター風味の味が食欲をそそります。
卵チャーハン
炒め物の代名詞チャーハンと魚醤の相性は抜群!火を通すことで魚介独特の臭みが無くなり、いくらでも食べられるチャーハンに変身します。
あんかけチャーハン
卵チャーハンに、カニ缶ベースのあんをたっぷりかけたご馳走チャーハン。いつものチャーハンを、魚醤とカニ缶で贅沢に食べてみてはいかがでしょうか。
納豆チャーハン
残り物で作れる、簡単料理の代名詞それが納豆チャーハン。しかし、魚醤を加えることでワンランク上のチャーハンに早変わりします。納豆のネバネバが無くなるまでしっかり炒めるのがポイント。
豚キムチチャーハン
キムチの辛さで魚醤の風味が消されてしまいそうですが、実は全然そんなことはありません。辛さと魚醤の風味が全くケンカせす、意外なほどにマッチします。
焼きうどん
こちらも炒め物の定番焼きうどん。醤油や塩の代わりに魚醤を使うことで旨味たっぷりの一品に仕上がっております。
まとめ
秋田名物のしょっつるとは、秋田県の県魚ハタハタを使った魚醤のことを指します。醤油に近い味ですが、醤油よりもさらに塩分濃度が高く、旨味成分のたっぷり詰まった調味料なのですね。火を通すことで魚介独特の臭みが飛ぶため、炒め物、煮物、汁物料理と相性バッチリです。
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